ブラック企業に一矢報い、ブラックを脱却させる(未払い残業代請求裁判)

飲食業界特化型の複雑な法律違反の企業に勤めている方に。未払い残業代請求裁判に関わるブログです。

第1章ー④ 固定残業代制度が有効になるには

で書きましたが、固定残業代制度を有効と認めてもらえる要件とは、

 

1.就業規則、賃金規定に固定残業代制を定めているか?

2.三六協定を締結しているか?

3.上記1,2をきちんと周知しているか?

4.固定残業代を何時間分に定めているか?

5.4の時間を超えた時には追加で支払う合意をしているか?かつ、超えた時に支払った実績があるか?

6.給与の内約が、基本給と“何時間分の”残業代か分かるように明記してあるか?

7.残業代の計算が、時間外・深夜時間外・休日割増など、適正に計算されているか?

 

でした。

一つずつ見ていきましょう。

 

1.就業規則、賃金規定に固定残業代制を定めているか?

飲食業界に限らず、雇用者というのは、使用者(つまり会社や社長さん)

“契約”を結んで働きます。働いて、その対価が“給料”ということですね。

会社に就業規則があり、そこに入社したあなたは、それを承諾して守ります、

だから働いた分お給料下さいね、いいですよ、ということですね。

 

※ただし、たまーに勘違いしていらっしゃる方もいるので、念のために・・・

労働基準法就業規則です。

就業規則は会社(または事業所)の中の法律とも解釈できます。

就業規則とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について労働基準法等に基づいて定められた規則のことをいう。

事業場ごとに見て10人に達しない事業場は作成届出の義務は生じないが作成したときはそれも就業規則として法の規制を受ける。

就業規則には、必ず盛り込まなければならない絶対的記載事項と、制度があれば記載しなければならない相対的記載事項が決められています。

wikipedia等より一部抜粋

 この、絶対的記載事項というものに、賃金体系として基本給や年齢給、職能給、住宅手当や扶養手当といった賃金を構成する要素を決めて記載します。

賃金の計算方法についても記載の必要があり、時給制や日給制、月給制、年棒制の中から、実際に運用するものをすべて規程に入れます。

欠勤や遅刻、早退、あるいは、残業手当の賃金の計算方法を盛り込むとともに、育児休暇や介護休暇などの取得時の賃金の取り扱いについても明記が必要です。

また、中途入社の社員に対する日割り賃金の計算方法についても、規定を設けておきます。

という風に、就業規則には皆さんの給料はこういう感じで決まりますよ、

というのを書かなくてはいけません。

上記の様にややこしいことなので、別規定・別紙として【賃金(給与)規定】として

作成、発行してもいいよ、とのことです。

 

つまりここに、全社員の残業時間を計算して支払うのがちょっと大変なので、

申し訳ないけど【固定残業代制】というものにさせてくださいね

と書いていなければなりません。

『従業員が数人(10名以下)しかいないから、

個別に契約書を交わしただけで定額残業代ということにしている』

というのは、残念ですが(裁判等になった場合は)認められないわけです。

 

4.固定残業代を何時間分に定めているか?

にも関わりますが、会社として今まで見てきた感じだと、皆さん〇〇時間(10とか20とか)くらい残業してるから、基本給はバラバラかも知れないけど、〇〇時間分の残業手当は先に支払う約束をしておきます!!というのを、就業規則に定めておかなければなりません。

 

この就業規則、賃金規定に何も書いておらず、お前には固定残業代制を採用して払う、というのはまかり通りません。

なぜなら、労働者に不利な条件を一方的に押し付ける契約というのは、就業規則よりも強い法律の労働基準法が禁止しているからです。労働基準法就業規則です。

 

もしあなたが、入社して就業規則を見たことないな、と思ったら、何気ない顔をして、「そういえば、就業規則って見たことないなー?見せてもらえませんか?」と優しく聞いてみましょう。

「そんなものないよ」とか、「あー、今度ね」とか言われたら、ブラック企業の可能性があります。

固定残業代制を採用しているのに、10人以下だからそんなものないよ、作る義務はないんだから、と言われたら、その場合も同じです。

 

長くなったので、以降はまた次回。