第1章ー⑤ 三六協定
④からの続きです。
続いての要件は、
2.三六協定を締結しているか?
ですが、残業(=一日8時間以上、週40時間以上)をさせるためには、労使間で三六協定を“適切に”締結しておく必要があります。
固定残業代が発生するには、残業が発生するからであり、残業させるには三六協定が必要、という三段論法で、感覚的には“当たり前”のように感じます。
しかし、裁判記録・判例を色々と検索してみると、
「確かに三六協定は締結してなくて違法状態だけど、残業代は一応払ってるから(未払い残業代とはならずに)セーフ」というような判決もあったりします。
三六協定はあくまでも、法定時間外労働を従業員にさせることの免罰効果(処罰されないための手続き)に過ぎないのです。
つまり、三六協定を結んでおらず、裁判になっても、ブラック経営者は『怒られちゃった、テヘ』くらいで済むということですね。
働き方改革っていうのは、こういうところにテコ入れをして【改革】と呼べるのではないでしょうかね?お偉い政治家さんたち。
だから、ブラック企業ってモノが無くなるどころか減りもしないんですよ?
だから、いつまで経っても過労死とか過労自殺者とか、過労鬱とか、働く側の犠牲者が出続けるんです。
ニュースになってからでは遅くないですか?
しかも、経営者が過労死って、あまり聞いたことがありませんね。自分の会社だからでしょうね。(もちろん、労働者にとっても自分の会社ですが…)
※「三六協定が無いから、固定残業代制度が無効」とは思っていません。そうなるべきだとは思いますが…あくまでも、すべての要件を満たして初めて、完全適法な固定残業代制度と呼べるのでは?という提起です。
感情が出てしまいました。・・・話を戻します。
三六協定は、民主的な選出方法で選出された代表者が署名して初めて効力を発揮します。会社側からひとりを選び、『君が代表してサインして』というのはアウト(無効)です。
そして、その代表者もしくは会社側から、その他大勢の社員に対して、周知・説明するのが大事な点です。
要件の一つ、3.を満たすということですね。
代表に選ばれる人が、どう考えても会社のイヌ的な人にならないように願うばかりです。
周知というのは、だれでもいつでも見る事が出来る状態にしておくことで、最悪の場合、隠してあったとしても「見せて下さい」と言われた時にはすぐに出せないと、『周知』されている、とは言えません。
見たい時に【申請書】みたいなものを書かせることも【圧力】になるので禁止です。
使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付すること、その他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない
最後の“その他の厚生労働省令で定める方法”というのは、会社の共有フォルダなどに入れて、いつでも自由に見る事が出来るように、的なことです。
隠してあってもアウト、にして欲しいくらいですけどね。
たまに、くだらない社訓とかを飾ってある会社ありますけど、せめてその横に就業規則も掲示しなさいよって思います。
では、次回は【5.4の時間を超えた時には追加で支払う合意をしているか?かつ、超えた時に支払った実績があるか?】を見ていきます。
第1章ー④ 固定残業代制度が有効になるには
③で書きましたが、固定残業代制度を有効と認めてもらえる要件とは、
1.就業規則、賃金規定に固定残業代制を定めているか?
2.三六協定を締結しているか?
3.上記1,2をきちんと周知しているか?
4.固定残業代を何時間分に定めているか?
5.4の時間を超えた時には追加で支払う合意をしているか?かつ、超えた時に支払った実績があるか?
6.給与の内約が、基本給と“何時間分の”残業代か分かるように明記してあるか?
7.残業代の計算が、時間外・深夜時間外・休日割増など、適正に計算されているか?
でした。
一つずつ見ていきましょう。
1.就業規則、賃金規定に固定残業代制を定めているか?
飲食業界に限らず、雇用者というのは、使用者(つまり会社や社長さん)と
“契約”を結んで働きます。働いて、その対価が“給料”ということですね。
会社に就業規則があり、そこに入社したあなたは、それを承諾して守ります、
だから働いた分お給料下さいね、いいですよ、ということですね。
※ただし、たまーに勘違いしていらっしゃる方もいるので、念のために・・・
就業規則は会社(または事業所)の中の法律とも解釈できます。
就業規則とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について労働基準法等に基づいて定められた規則のことをいう。
事業場ごとに見て10人に達しない事業場は作成届出の義務は生じないが作成したときはそれも就業規則として法の規制を受ける。
就業規則には、必ず盛り込まなければならない絶対的記載事項と、制度があれば記載しなければならない相対的記載事項が決められています。
wikipedia等より一部抜粋
この、絶対的記載事項というものに、賃金体系として基本給や年齢給、職能給、住宅手当や扶養手当といった賃金を構成する要素を決めて記載します。
賃金の計算方法についても記載の必要があり、時給制や日給制、月給制、年棒制の中から、実際に運用するものをすべて規程に入れます。
欠勤や遅刻、早退、あるいは、残業手当の賃金の計算方法を盛り込むとともに、育児休暇や介護休暇などの取得時の賃金の取り扱いについても明記が必要です。
また、中途入社の社員に対する日割り賃金の計算方法についても、規定を設けておきます。
という風に、就業規則には皆さんの給料はこういう感じで決まりますよ、
というのを書かなくてはいけません。
上記の様にややこしいことなので、別規定・別紙として【賃金(給与)規定】として
作成、発行してもいいよ、とのことです。
つまりここに、全社員の残業時間を計算して支払うのがちょっと大変なので、
申し訳ないけど【固定残業代制】というものにさせてくださいね♡
と書いていなければなりません。
『従業員が数人(10名以下)しかいないから、
個別に契約書を交わしただけで定額残業代ということにしている』
というのは、残念ですが(裁判等になった場合は)認められないわけです。
4.固定残業代を何時間分に定めているか?
にも関わりますが、会社として今まで見てきた感じだと、皆さん〇〇時間(10とか20とか)くらい残業してるから、基本給はバラバラかも知れないけど、〇〇時間分の残業手当は先に支払う約束をしておきます!!というのを、就業規則に定めておかなければなりません。
この就業規則、賃金規定に何も書いておらず、お前には固定残業代制を採用して払う、というのはまかり通りません。
なぜなら、労働者に不利な条件を一方的に押し付ける契約というのは、就業規則よりも強い法律の労働基準法が禁止しているからです。労働基準法≫就業規則です。
もしあなたが、入社して就業規則を見たことないな、と思ったら、何気ない顔をして、「そういえば、就業規則って見たことないなー?見せてもらえませんか?」と優しく聞いてみましょう。
「そんなものないよ」とか、「あー、今度ね」とか言われたら、ブラック企業の可能性があります。
固定残業代制を採用しているのに、10人以下だからそんなものないよ、作る義務はないんだから、と言われたら、その場合も同じです。
長くなったので、2以降はまた次回。
第1章ー③ 固定残業代制度の要件
②からの続きです。
三六協定がないと書きましたが、それだけでも結構なブラックです。
しかし、この会社には、“就業規則”もない、のです。
給料に対して、予めひと月の残業時間を想定し、残業代を組み込んで支払う方法を、
【固定残業代制】と呼びます。
営業職の方などは、実際に会社に居る時間の方が短いので、
【みなし残業】等とも呼ばれていますが、
当ブログでは「飲食業界の方に向けて」という趣旨の下で話を進めますので、
【みなし残業】については割愛させて頂きます。
この【固定残業代制】は、厳密には法律(労働基準法)等によって定義は
されていません。
しかも、様々な判例を読むと、違法性があったり、この制度を認めるものまで
多岐に渡ります。
この、認めたり(違法性在り)認めなかったり(違法性無し)という判断基準ですが、
結局のところ、『ある要件』を満たしているかどうか?という点です。
『ある要件』とは・・・?
結論から書いてしまいますが、
1.就業規則、賃金規定に固定残業代制を定めているか?
2.三六協定を締結しているか?(代表者などの選定は後程)
3.上記1,2をきちんと周知しているか?(周知と掲示についても後程)
4.固定残業代を何時間分に定めているか?
5.4の時間を超えた時には追加で支払う合意をしているか?かつ、超えた時に支払った実績があるか?
6.給与の内約が、基本給と“何時間分の”残業代か分かるように明記してあるか?
(その他の〇〇手当に含んでいるとか、聞いてないとか、細かいことは後日書きます)
7.残業代の計算が、時間外・深夜時間外・休日割増など、適正に計算されているか?
というところです。
これらの内、一つでも履行していないときには、あなたの固定残業代は
違法(無効)になることがありますし、追加で請求できる可能性があります。
つまり、【固定残業代制】というのは、経営者の方が考えているほど
簡単な制度ではない
ということです。
確かに、経営者や経理の方には(多少)メリットもあります。
そもそもこの制度が普及したのは、全従業員の労働時間を
イチから毎月分計算することなく、ある程度の時間までは「このくらい」と
決めて支払うモノですので、計算する手間を省けることからだと思います。
ただし、インターネットやSNSが普及しまくった時代ですので、
小手先の誤魔化しや、バレないだろうという考えはすぐに暴かれます。
ある労務専門家さんのブログでは、
実際は会社の側にはあまりメリットはなく、労働者側にメリットが大きい制度である
とも書かれている通り、ある一定以上の条件をクリアできる会社でなければ、デメリットこそあれども、メリットは少ないと思います。
※もし、今、経営者の方がこのブログを見ておられましたら、直ぐにでもその制度はやめてください。あとあと面倒なことになりかねませんよ?
次回は、先に挙げた各要件を詳しく解説してみたいと思います。
*1:詳しく知りたい方はコメントを頂ければ、説明させて頂きます
第1章ー② 複雑な環境
飲食業界に限りませんが、働くうえで、
私たちは様々な法律の基で生計を立てるために日夜働いています。
例えば、諸先輩方を含め、私の様に
『残業代を取り返してやる』
とか
『一矢報いたい』
と思わなければ、私たちを取り巻く法律たちを知る、
知ろうという機会にはそうそう出会いません。
ましてや、裁判記録・判例など、好き好んで読む機会は
趣味でもない限りありませんね。
まずは、私のいた【ブラック企業】の実態をお伝えしたいと思います。
引かないでくださいね(笑)
始業13:00
終業24:00
休憩120分
基本給169,000円
時間外101,000円(80時間分)
インセンティブ(ボーナスのことです※後日)売上・実績による
ここまでで、「んん??」と思った方は、多少なりとも知識がおありの方ですね。
まずは、13時から24時、休憩を120分引いたら・・・
そうです。実働9時間ですね。
使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
という、労働基準法第32条第2項の【労働時間の原則】に反しています。
ただし、労働基準法36条に基づく労使協定、いわゆる【三六協定】を労使間で締結している場合には、1日について8時間以上労働させる事が出来ます。
しかし!
残念ながら、この会社、三六協定がありません。
上記の様な、時間と給与などが記載された“雇用契約書”だけが交付されています。
この辺も後日書きますので、今はさらっと流してください。
上記の数字の箇所だけ書きますが、あとは
時間外手当101,000円(80時間)ですね。
169,000円÷21日=8,047円(日当)
8,047円÷8時間=1,005円(時給)
1,005円×1.25=1,257円(時間外の時給)
1,257円×80時間=100,595円(時間外手当)
最後の金額を四捨五入のようにして、出来上がったのが101,000円ということです。
実際に電卓を叩いてみた方はお気づきかと思いますが、
実は、ここにも【ブラック体質】が隠れています。
169000÷21=8047.619・・・なので、切り下げていますね。
こういう計算は、
端数に関しては賃金の全額払いの原則があるため
特に支給の項目においては一律に端数を切り捨てることはできません。
とあるように、切り捨ててはいけないんですね。
賃金等に関しては全額払いの法則がありますので、
0.6銭分を払っていない!!
ということになりかねません。
他にお気づきの点があるかと思いますが、
80時間分の時間外手当って!?
というところでしょうか。これはまた次回書きます。
自分の内容と似てるな、と思った方はコメント下さい。
段々とややこしく、複雑になってきますので、ついてきてくださいね(笑)
第1章ー① 当ブログについて
ブラック企業や会社がマスコミに取り沙汰される時代。
ブラックではない会社の方が少ないのではないでしょうか?
しかし、その中でも待遇が良かったり、ホワイトまで行かなくても、
オフホワイトに近い企業にお勤めの方には参考にはならないかと思います。
実際、私も参考にさせて頂いていますが、探せば探すだけ
「未払い残業代」や「解雇」に関するブログを綴っておられる諸先輩方に対し
敬意を表すのと同時に、
『ちょっと自分の環境とは違うんだよな・・・』という方の為にも、
飲食業界特化型のブログを開設いたしました。
飲食業には限りませんが、働くうえで否が応でも関わってくる、
労働基準法等についても、深くなりすぎない程度に掘り下げて、
自分の環境に適用されているか解り易く書いてみようと思います。
このブログの趣旨について
ブラック業界の代名詞、【飲食業界】に身を置いて20余年。
ブラックだけど『遣り甲斐』を感じることで、「この業界はこんなもんなんだ」と
言い聞かせながら働いてきましたが、ここにきて堪忍袋の緒が切れる。
(※詳細については以後書いてみたいと思います)
我慢の限界と、自分の身体と家族を犠牲にしてまで、クソみたいな環境で働く
意味を見いだせなくなったので、退職。
しかし、残してきた後輩社員を見捨てることは出来ませんし、
何しろ未払い残業代があるではないか!?ということで、
諸先輩方のお知恵をお借りしつつ、
【ブラック体質を是正させ、未払い残業代を返して頂く】
という信念のもと、色々とやってみよう!!という趣旨になっております。
コメントは誰でも書き込めます。
質問や、自分の状況はどうなんだろうと疑問に思った方は、コメント下さい。